Thursday, April 12, 2012

スマートテレビは電機業界を救わない

電機業界の赤字が報じられる中、スマートテレビが次の製品として注目されています。AppleはApple TVというセットトップボックスを発売していますが、液晶パネルがついたAppleテレビが発売されるという噂もあります。

しかし、スマートテレビが電気業界を救うことはないのではないでしょうか?

ジャーナリストの平林久和氏もそのことを下記記事の中で述べています。

新しいiPadからスマートテレビを考える・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第29回

ポイントとなるのは、テレビにスマートテレビの機能をつけるよりもApple TVのようなスマートテレビの機能があるセットトップボックスのほうが安価で競争力があるということと、氏が述べている以下のことに尽きると思います。


私は絶対に50万円もするスマートテレビを買わない。内蔵されたCPUやメモリが年々進化することが目に見えているからだ。ディスプレイの裏にコンピュータの基本機能と円盤メディアの挿入口がついたテレビ一体型パソコンに、まったく興味がないのと、理由は同じだ。

非常にもっともな理由です。

 

例えば、AppleのAirplayのような技術で、タブレットやスマートフォンで操作している動画やコンテンツをそのまま液晶テレビに映したり、手元で操作することができれば、買い替えが容易でないテレビ本体のほうにスマートテレビの機能をつける必要はなくなります。

またスマートフォンにはHDMI端子がついたものも多くありますので、すでにスマートフォンをテレビに接続すればスマートテレビ的な使い方もできるようになっています。

電気メーカーは量産しているスマートフォン製品をベースに、液晶と3Gの通信チップを外せば、Apple TVのようなAndroidベースのテレビ用セットトップボックスを簡単に開発することもできます。

この場合あらたに必要になるのはリモコン機能とテレビ用のUIを新たに設けることだけです。

液晶やカメラがついているiPod touchが2万円以下で販売されていることを考えれば、既存のスマホをベースに1万円を切る価格でスマートテレビ機能をもったセットトップボックスを制作することは十分に可能でしょう。

 

ですので、私もスマートテレビが電機業界を救うことはないと考えています。消費者が欲しいのは、スマートテレビ的な体験を安価で簡単にできることであって、スマートテレビそのものではありません。

ドリルを買う人に必要なのは穴であって、ドリルそのものではないようにスマートテレビに求められているのは、スマートテレビそのものではなく、なんらかの手段でそのような使い方を簡単に実現してくれるものです。

それはスマートフォンかもしれないですし、PS3のようなゲーム機、タブレット、専用セットトップボックス、HDDレコーダー、衛星放送のチューナー、あるいは全く新しい製品かもしれません。 

そのようなスマートテレビを実現する製品はブロードバンドのルーターや、衛星放送のチューナーのようにデバイス自体は無料で配布し、コンテンツ利用料金等で回収するモデルとなることも考えられます。そうなれば製品自体の価格は数万円どころか実質0円です。

少なくとも数万円から数十万円するスマートテレビがそのような商品に対して競争力を持つのは難しいでしょう。 

そしてその場合でもより収益があがるのはそのようなデバイスよりも、そのデバイス上で展開されるAppleやAmazonのような映画配信・販売サービスであったりHuluのようなサービスだったりします。 

AmazonがKindleで試しているように、そうしたデバイスに広告表示機能を盛り込んで、広告で収益をあげていくというモデルも考えられます。 

日本の電気メーカーにはそれを実現するテレビではない何かや、そうしたサービスを世界市場に向けて出していって欲しいと思っています。  

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