Saturday, January 20, 2018

クラウドファンディングを始めたら深センの大手工場から連絡がきた

昨年の12月にInfinity Ventures SummitのLaunchPadというスタートアップの登竜門となるピッチイベントに登壇させていただき、そのタイミングに合わせてクラウドファンディングキャンペーンを開始しました。

Indiegogo: hackfon - Turn Your Analog Phone to a Smart Remote

本来なら、もう少し準備が整った段階でスタートさせたかったのですが、前述のイベントに登壇できるという機会があったため、まだコンセプトから半歩進んで理論試作品ができているという段階でしたが、低めのターゲットでクラウドファインディングを開始。おかげさまで1週間ほどでターゲットを達成させていただくことができました。

突然Facebook Messengerに届いたメッセージ

そのターゲットを達成する前、まだ2000ドルも支援が集まっていない段階で、あるFacebookメッセージを受信しました。

30年以上EMSを行なっている会社から、このhackfonという製品の製造パートナーになりたい、との連絡でした。

馴染みのない方のために説明させていただくと、EMSというのは海外に安価に荷物を発送できる郵便局のサービスではなく、製造受託で電子機器などを生産するElectronics Manufacturing Serviceのことです。

このメッセージを突然Facebook Messengerで受け取ったときには、詐欺かな、と思いましたが、先方の会社のHPをみてみると、とてもしっかりとしている様子。

やりとりをしてみると、本社はシンガポールにあり、工場が深センの近くの東莞にあるとのこと(タイトルには伝わりやすいように深センの工場としましたが、正確には深センのお隣の東莞です)。たまたま、連絡を受けた翌週くらいから、深センにあるジェネシス社さんにて、工場の工員として体験インターンをする計画を立てていましたので、その機会に足を伸ばして、先方の工場に伺ってみることにしました。

(その時のインターンの様子を、一緒にインターンされていた伊藤亜聖さんがブログにまとめられています:深圳在外研究メモ No.43 電子製品製造受託のJENESISでインターンしてみた編~緊張感がないと日本市場向けのモノは作れない )

行ってみて驚かされた巨大な工場

深センでインターンさせていただいてる1週間の合間に、深センから高速鉄道で1時間弱のところにある駅に移動し、先方のお迎えで、工場へと向かいました。


工場に近づくと、車の中だったので全景を撮れなかったのですが、かなり大きな工場。あとで聞かされたところ、サッカーコート11面の広さがあり、この写真の左手が4階建ての工場棟、右手が倉庫棟で、倉庫のさらに右隣に、従業員用の寮が併設されているというかなりの大規模な工場でした。

従業員数は3500人。ちかくに1/4ほどの大きさの第二工場があり、さらに徒歩数分のところに第三工場の建設に着手したとのこと。


こちらの工場では、製品の金型から一貫して全て自社内で生産しているそう。ちょうど年末で清掃日で生産を行っていなかったため、製品が映り込む心配がないということから工場内をかなり自由に写真撮影させていただくことができました。

こちらが主に製品のプラスチック外装などを生産しているフロアー。

ずらっと並んでいる金型をインジェクションする機械。写真に映り込んでいない機械もかなりあったのですが、これだけでも相当な規模です。

一つ上のフロアーにあがると組み立てのライン。こちらも何百人単位で作業できる巨大なスペースでした。

さらに上のフロアーにあがると、ずらっと大量のPCBの機械が。窓越しだったので、あまり広角で撮影できなかったのですが、何台あるんだろ...。

こんな感じで、機械の清掃やメンテナンスをされているところでした。

こちらのお二人に工場をかなりくまなく紹介いただきました。


ハードウェアスタートアップを支援するEMS

さて、当然の疑問ながら、まだ歩き始めたかどうかも定かではないハードウェアスタートアップになぜ声をかけていただいたのだろう?という疑問がでてきます。

弊社でクラウドファンディングを始めた製品が、アナログ電話機に繋げると、アナログ電話をダイヤルすることでIoT機器やWebサービスを操作することができるスマートリモコンに変えてしまうというものです。いわば、電話機のダイヤルを、プログラムできるAmazonダッシュボタンのように使うことができ、特定のボタンやダイヤルの組み合わせによって、HueライトなどのIoT機器をワンタッチで操作したりすることができます。

こちらのEMSは30年以上、電話機を製造しており、現在の主力製品が電話機やルーターなどといった通信機器と、LEDなどの照明機器なのだそう。

そうしたことから、hackfonというアナログ電話機という枯れた技術を活用し、スマートデバイスとして生まれ変わらせるというコンセプトの弊社製品に興味をお持ちいただいたのだそうです。

それにしても、このようなかなりの大手と思われる会社が、このように迅速に動かれるとは...。

話をきいてみると、私も拝見したことがあるフランスのハードウェアスタートアップの製品の設計や、製造を手がけていたり、blinkという昨年Amazonに買収された会社のスマートセキュリティーカメラ製品はこちらで量産化のための設計や製造がされているのだそう。


こちらの会社に訪問したあとのCES Unveiledと、CESでもblinkという会社のブースをみることができました。

 (CES Unveiledにて。スタッフの方がちょっと疲れたような表情をしている写真になってしまいました...)

こちらのblinkのセキュリティーカメラですが、すでに何万個も(しかも後半のほうの数字が)販売されているとのこと。スマートセキュリティーカメラという、悪く言えば今どきですごく際立った特徴があるわけではないのですが、$99という手頃な価格で購入ができ、Amazonでも900以上のレビューがありながら評価が4以上という高評価を保っています。

そのあたりがアマゾンによる買収の決めてにもなったのでしょうね。

ただこちらの製品は、Best BuyではEコマースサイトや店舗などでも探してみましたが販売されていない模様。もしかしたら、販売マージンの低いAmazonでの販売に特化した価格設定を行っているのではないかと思いました。

貪欲な深センの製造業

こちらの会社はシンガポール本社で、本工場が東莞にあるということで、他の中国本社の製造業と一緒にするのは、適切ではないかもしれませんが、次の成長機会のために、弊社(FutuRocket)のような小さなスタートアップにも声をかけていただくような貪欲な姿勢には敬服させられました。

工場をみせていただいただけではなく、NDAも弊社フォーマットに沿って適切に手続きを迅速に進めていただいたり、打ち合わせのあとは、翌日にすぐに簡潔で論点がまとまったWrap Upのメールが送られてきたり、いまでもフォローアップのメッセージが、きちんとWeChatで送られてきたり、と、ものすごくしっかりとしているんですよね。

印象としては、深センのスピード感を保ちながら、日本や台湾の企業にあるような法務やきちんと抑えるべきところをきっちりと仕事をされているという、日本と中国の両方の良さを兼ね備えた会社であるように感じました。

また上記で触れた、フランスのハードウェアスタートアップ製品の量産のための再設計の見積金額などはかなり安価だと感じる金額でした。

工場もとてもキレイで、最新の設備の機会をきちんとメンテナンスし、日本のような6S活動にも真面目に取り組んでいるように見えました。


(工場内で掲げらていた6S:整理、整頓、清掃、清潔、躾、安全の掲示。最後だけ英語でSafetyなんですねw)

おそらくこれからもやりとりさせていただいたり、お付き合いさせていただくことになる会社になるのではないかと思います。

最後に余談ですが、hackfonというindiegogoでクラウドファンディング中の製品ですが、まだ20日間ほどキャンペーン期間を残しており、500円から支援いただけるようにリワードを設定しています。

興味をお持ちいただいた方には、このような報告を今後の製造などの過程を共有させていただきながら、製品を作り上げていきたいと思いますので、ご支援お待ちしています。