ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ
ウィキノミクス138ページより。
オープンソース企業がもつコスト的な優位性が非常に大きいことはたしかである。ソフトウェアの作成からデバッグ、口コミの紹介まで、作業の大半をオープンソース・コミュニティがしてくれるのだから、大規模な販売部隊やエンジニア部隊を抱える必要がない。支出の多くは付加価値を高める機能やサービスの開発に向けられる。これは、コストの70%が販売・マーケティングに支出される従来のエンタープライズモデルとの大きな違いである。ソフトウェアをオープンソース化することによって、社外の多くの賛同者の助けを得ることができ、独自にソフトウェアを開発するよりも、相対的に安価に高品質なソフトウェア、サービスを生み出していくことが可能となります。
例えば、ウィキペディア(これはソフトウェアではなく、サービスですが)の社員は5人のみであり、その他大勢のボランティアによってサービスが運営されていると、当書籍では紹介されています。
ベンチャー企業の多くは、オープンソースのソフトウェアを扱っており、低コストでの開発が可能となりました。しかし、そのようなソフトウェアを使って作られた独自のサービス、ソフトウェアは、運用を重ね、サービスを続けていくために、メンテナンスと開発のエンジニア部隊を抱えることが必要となります。
サービスの機能が追加され、複雑化し、利用者が増え、メンテナンスの重要性が上がるにつれ、より多くのスタッフを抱えることが必要となり、時を経るに従って、さらなる改善にはより多くの労力とコストが必要となっていきます。
またよほど秀逸なビジネスモデルが出来ない限り、営業・マーケティングのスタッフも必要となっていきます。
結果として、サービスの開発・運用に多くのコストがかかる従来の企業と同じようになり、ベンチャー企業の武器である、スピード、変化への対応力が削がれていくことになります。
オープンソースで開発される競合製品や、無料で公開される他社の類似サービスも、大きな脅威となっていきます。
コストの増加曲線が、サービスの成長曲線をうわまったとき、企業はジレンマを抱えることになります。
こうした状況に対応するためには、ひとつはマーケティング上での圧倒的な優位性を獲得すること。例えば、mixiやDeNAのモバゲータウン。(この両社に関しては、サービスの成長が、コストの増加を大きく上回っているともいえます)
もうひとつは、独自に開発した製品をオープンソース化、あるいはそれに近い形で、解放していくこと。シックスアパートの製品や、APIの公開などが、その限定的な形と言えるのではないかと思います。(コストの増加を抑え、サービスを成長させていく助けとなります)
ただ、APIの公開によって得られる効果は限定的ですし、ソフトウェアやサービスの核となる部分が他者の手によって改善されていくわけではありません。
一方で、そういった部分をオープンソース化していくことは、そのソフトウェアを開発した企業の核となる部分を公開することになるわけで、やはり難しい問題が多くあるのではないかと思います。
オープンソースソフトウェアや他社のAPIを活用することによって、成長し、面白いサービスを産み出してきたインターネットのベンチャー企業。その成長のジレンマが今、いくつか現われてきているように感じています。
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