9月28日付の産經新聞の一面に梅田望夫氏による電子書籍に関するコラムが掲載されている。
梅田望夫氏は、本はいつか無くなってしまう(絶版になる)かもしれないものであり、人はいますぐ読む必要があるからではなく、いつか読むかもしれないことを無意識に意識して本に接してきたと語っている。
部屋に未読のまま山積みになっている本をみるとうなずける話でもある。一度出会った本はその場で入手しないと後から出会うことが難しいという脅迫観念がそこにはある。
図書館もいつかは無くなってしまう可能性がある本を資産として保存しておき、後世でも情報にアクセスできるようにしておくという使命が存在してきた。
しかし、全てがデジタル化され瞬時にダウンロードして読むことができるようになれば資産として本をストックしておく必要性は限りなくゼロに近づいていく。
梅田氏はそれが本を売るための出版社のための論理ではなく、読者のための論理として起きているイノベーションだと述べている。
いつでもダウンロードできるなら、今買う必要はなくなる。
ヤフーオークションが日本でサービスを始めた当初、中古ファミコンソフトの価格が高騰するという現象が起きた。しかしすぐにその騒ぎは静まっていき、大抵のソフトは数百円で購入できるようになっていった。
それはユーザーが「今買わなくても、欲しい時にオークションを検索すればいつでも遊びたいときに買えるから」と気づいたからでもある。
iPhoneの有料アプリの競争が価格低下を引き起こしており、アプリ市場がそれほど活性化していないのも「いまダウンロードしなくても、遊びたいときにいつでもアプリを見つけることができるから」という心理が大きく作用していそうだ。
そのスパイラルから逃れるためには、いつでも、毎日でも使うというアプリや、それをユーザーに想像させるアプリ(新聞アプリ、乗換案内、Twitterクライアント、最近ではセカイカメラ)や、必ず使うことが予想できるアプリ(辞書アプリ)であるという方向性がある。
いつでもモノが買える時代にモノを売ることがかつてない程難しくなっている。モノは売る時代ではなく、創ることが価値となる時代かもしれない。
ほぼ日手帳のサイトをみていたりすると、モノ売りではなく、モノを創ることを価値としているように感じる。
またジャストシステムのATOKがパッケージ販売だけではなく月額課金のサービスを充実させていっている流れにも、モノを所有するためにお金を支払う価値感から、モノを使うことに対してお金を支払うという価値観の変化が背景にあるだろう。
ウェブサービスに有料化の流れがきているが、創造につながるサービスや、いつでも情報にアクセスできるとう安心感をもたせることに成功しているサービスは比較的低いハードルで有料かができるのかもしれない。それはFlickrにも、はてなにも、ニコニコ動画にも共通しているように感じる。
No comments:
Post a Comment