Monday, November 7, 2016

ニコ技シンセン深圳観察会に参加してきました

先月、ドバイでの展示会の帰りに、深センに立ち寄ってニコ技シンセン深圳観察会に参加してきました。

深センは会社のメンバーが工場に訪問をする機会が多いのですが、僕のほうは海外での営業やマーケティングが主業務のため、展示会にいくことやお客様に訪問することはあってもなかなか工場にいく機会はなかったりします。

高須さんのメイカーズエコスシステムという、深センのモノづくりの状況を紹介した本がとてもおもしろかったので、ずっと気になっており、ドバイからの帰りにちょうど香港をこのタイミングで寄れたので、運良く深センにも足を運ぶことができました。

メイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない。 (NextPublishing)メイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない。 (NextPublishing)
高須 正和

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台風が香港到着直前にきていたことから、深センメイカーフェアが順延となりましたが、一日だけ参加してきました。訪問したのは、上記の本の中でも登場するSeeed、ジェネシスそしてNXROBOとMakeblockの4社です。

最初に訪問したのは、ホーム用ロボットを開発しているNXROBO社。(http://www.nxrobo.com/)


オフィスにいるメンバーはまだ10名ほどのスタートアップらしい雰囲気。


このNXROBO社のホームロボット、BIG-iは家の中を動き回り、音声認識で家電を操作してくれたり、玄関へ移動して訪問者の情報を伝えてきれたり、とコンシェルジュ的に働いてくれるロボット。廊下でデモンストレーションを拝見させていただきました。BIG-iはKickstarterで19万ドルを集めています。

BIG-i: The First Personalized Family Robot

一般に販売されるときの価格は約1000ドルほどになるようです。



CEOの林天麟(LAM, Tin Lun氏)。様々なロボットを作り続けてきて、このNXROBO創業に繋がっています。


NXROBO社のオフィスはこの南京大学の深セン研究施設の中。深センの科苑駅周辺は、こうした各地の大学の施設が集まっていて、R&Dの拠点にしていこうとしているようです。

次に、Seeed社のAgile Manufacturing Centerを訪問しました。


Seeedは、10枚ほどの簡単なプリント基板であれば、9.9ドルから発注できるようにしたサービスで世界中から注文を受け付けており、こうして受け取った注文の中からオープンにしてもよいと許諾を得たデータを他のユーザーに対してもオープンにしています。

また需要が多い基板はSeeedが製品化していて、それを自社のサイトで販売しています。

Seeed Studio

僕もこの訪問する前に深センMaker FaireのSeeedブースで展示されていたAruduboyという超小型ゲーム機が気になっていて、これはちょっと買ってみようかなと思っています。




深センMaker FaireでのSeeedブース。


こちらがArduboy。ものすごく小さい。そしてとても薄いです。お値段は49ドル。

Arduboy


こうした製品を日々作り出している工場の中をViolet Suさんの案内で見学させていただきました。


工場内での服装ルール。今回訪問した工場では、どこでもこうした規則がしっかりとしていました。


作業されている工場スタッフは、かなり若い方が多かったです。15歳から仕事を始めている人も珍しくなく、日本で大学生が卒業する年齢には、すでに7年の経験を積んでいるという若手ベテランスタッフも珍しくないのだそう。


スタッフの方は、このスツールに座ってずっと作業をされていました。この椅子で長時間作業するのはちょっと大変じゃないかな、とちょっと心配。

三件めは、深センを代表するハードウェアスタートアップとなり、深センを拠点とするハードウェアアクセラレータHAXが支援する会社の中でも1位を争う成功事例となったMakeblockのオフィスを訪問しました。

Makeblock


Makeblock社はこのオシャレなオフィスビルの中。UCバークレーも参加している場所のようで、建物の名前Tsinguhua-Berkeley Shenzhen Instituteと共にUCバークレーの学章も入り口に掲げられていました。


Makeblockはこの手前のmbotというトイロボットで有名になった会社。この製品の存在は私も知っていたのですが・・・



ドーンと、拡張パーツが充実していて、どれも安価で提供されています。こんなに自由度が高い拡張パーツが充実したシステムを形成していたとは。


こうしたパーツを使って、3Dプリンタも作れちゃいます。


参加者もみんな、すごく楽しそう。これをみて興奮しないガジェット好きはいないですよね。


Makeblockの試作品が作られたりするスペース。


社員の通勤自転車もコーポレートカラーのブルー。


執務スペースもとてもオシャレです。


珍しいピンク色のmBotもいました。


高須さんに説明いただいてわかったのですが、このビルのエントランスフロアに並んだこの箱、お弁当宅配専用の受取ロッカーなのだそうです。

最後に、深センでメーカーやスタートアップ向けに工場を製造受託をされているJENESISさんを訪問しました。

JENESIS



こうした様々な製品を製造されています。特に日本のお客様で、もう中国での製造を諦めたところ、最後の頼みの綱としてジェネシスさんにお願いされるお客様も多いのだとか。弊社(Cerevo)も、主にCerevo CAMの製造などでいろいろとお世話になっています(私がCerevoに参加する前のお話)。


こちらの工場は、Seeed社の工場以上に整理されていてきれいです。



この工場の椅子はこのプラスチック製のスツール。こちらのほうが木の椅子よりは楽そう。工場の椅子がスツールなのには何か理由があるのかもしれないですね。この疑問については、質問し損ねました。


ジェネシスさんの工場では、中国の他の一般的な工場の、とにかく出荷してしまおうという姿勢とは違い、なるべく不良品を除く、という姿勢でいて、通常は製造直後にQAをするところ、高温多湿という環境で長時間動作を行ってから、QAをするのだそうです。一定時間動作したあとに出てくる不具合はこうしてあらかじめ一定の負荷をかけてからテストすることによって弾いているのだそう。


こちらが製品テスト中の様子。かなり人数を割いて、力をいれてやられているのがわかります。


こちらの箱に入っているのは部品なのですが、中国のダンボールはホコリっぽく、ケバがでやすいので、ホコリが工場内に混入しないよう、別のスペースで保管、開梱しているのだそう。


工場内の掲示板には社員旅行の写真が貼ってありました。ホワイトカラーとブルーカラーのスタッフが仲良くなることにも役立っており、収入の多くを仕送りで地元におくってしまう工員にとっては、自分のお金でなくても遊びにいけるこうした機会は好評だそうです。

この後、参加者の皆さんで飲み会に。

翌朝の香港のフライトでの帰国だったので、飲み会の途中で失礼させていただきました。またぜひ参加したい会です。再見!


Sunday, October 23, 2016

Nintendo Switchには期待大だけど画面サイズが気になる。そして数年後には解像度がネックとなるかも

Nintendo Switch発表されていろいろと記事が出てきていますね。

ニンテンドークラッシクミニファミリコンピューターは予約し、そちらには入っていないメトロイドが内蔵されるNintedo Classic Mini NESも気になっている私も、仕事の合間にようやく、Nintendo Switchのことをあれこれと考え始めました。

個人的に画面サイズが気になっています。

小型なので、出張中にも手軽に持っていけそうなのが嬉しいですが、一定のサイズがないと本体単体で遊ぶときの没入感があまりないですし、テレビに接続できるとはいえ、画面のUIは本体のみで遊ぶときも想定して設計されますので、本体サイズがかなりユーザーのゲーム体験に影響を与えていくのではないかと思っています。

GIGAZINEでは海外の本体サイズの予測記事を紹介していますね。
ニンテンドースイッチの大きさはどれくらいなのか?力業で測るとこうなる

これをみてみると、
タブレット自体の大きさは最大横184.1×縦106.4mm。横158.2×77.9mmのiPhone 7 Plusよりは大きく、横203.2×縦134.8mmのiPad mini 4より小さいという感じです。
と紹介されていますが、iPhone 7 plusと比べて、Nintendo Switchにはベゼル幅がそれなりにありますから、画面サイズは7インチくらいなんじゃないかと思われます。iPad mini同様の7.9インチはなさそう。

個人的には、大画面がわりと好きで、タブレットもXperia Z2 tabletの10.1インチサイズを愛用しているので、ちょっと物足りないかな...。8インチくらいの大きさがあると嬉しいのですが、 ちょっとこのサイズは厳しそう。

ただ個人的には小さいサイズのものを好みとしている場合もあり、iPadはminiシリーズを購入していましたし、一眼レフはPENTAXの最小サイズだったものを利用してきて、いまではPenシリーズを経て、EOS-M2を愛用してきているので、実際にはこのサイズがしっくりくるのかもしれません。

ニンテンドークラッシクミニファミリコンピューターもコントローラーの小ささが気になっていますが、実際には触ってみないとわからないところですね。


そして、この画面サイズに加えて、解像度についても少し気になっています。

おそらくNintendo Switchは、この画面サイズから考えてもフルHDの解像度対応として登場するでしょう。ただ、もしかしたらこのことが数年後に足枷になってくるかもしれない、と思っています。

任天堂はかつて、Wiiシリーズがあまりにも成功したために、HDへの対応が大きく遅れました。任天堂のゲーム機がHDに対応したのは、Wii Uが登場した2012年末になってようやくのことであり、ソニーのPS3発売から6年後のことでした。(とはいえ、WiiやPS3が登場した2006年ではテレビのHDへのシフトがこれだけ早く進むのを予見するのは難しかった面もあるでしょうし、ある意味任天堂にとって不幸なことでした)

AppleはiPad ProやiPad miniなどで高解像度対応を進めていますし、ソニーはPS4 Proで4Kへの布石を打っています。ソニーは4K専用ゲームをリリースしないという方針ですが、4Kディスプレイの低価格化や普及も進んでおり、4Kに特化したコンテンツが今後予想以上に普及し、一般的なものとなるかもしれません。

HTC VibeやGear VRなどでVRコンテンツを体験していると、最初は没入感に夢中になるのですが解像感が足りないな、と感じることがあり、VRへの対応という意味でも高解像度化は意味を持ってくるところだと思います。

VR、これから高解像度か、小型か、軽量化か
「理想的な解像度は『8K』以上」(ソニー)

とはいえ、PS4 VRも解像度はフルHDですし、こうした考えは杞憂かもしれませんね。スマホの進化の速度も落ち着いてきた感じがしますし。

ただハードウェアの制約は後から補っていくのは難しいので、任天堂にはもう少し高スペック寄りに指向していって欲しいなと思っています。価格との兼ね合いで難しいところなのでしょうが。

余談ですが、テスラは先に未来に必要となるハードウェアを先行して搭載してしまい、後からソフトウェア・アップデートにより機能対応していくというスタンスをとっています。

テスラの全車両に完全自動運転を可能にするハードウェアを搭載へ

NINTENDO 64では任天堂もゼルダで、メモリー拡張パックを出していましたので、NINTENDO SWITCHでもこうした将来へのアップデート対応がもしかしたら仕込まれているのかもしれないと考え始めたりすると寝れなくなりますね。

早く遊べるのを楽しみにしていますが、まずは年末は小さなニンテンドークラシックミニを鞄に入れて出先にも持ち運んだりして堪能したいと思います。

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Friday, July 15, 2016

スタートアップが数千社集まったパリViva Technologyはスゴかった #Vivatech

6月30日から7月2日までパリで開催された数千社のスタートアップが集まった展示会・カンファレンスイベント、『Viva Technology』に参加してきました。




http://www.vivatechnologyparis.com/


Cerevoというハードウェアベンチャーに入社してからはこうした海外の展示会に、毎月のように出展したり参加したりしています。いつもは出展者という形での参加が多く、自社の展示ブースを切り盛りしたり来場者の対応をするのに手いっぱいでイベントを俯瞰的に見て回ることは難しいのですが、今回は展示会内で開催されたひとつのピッチコンテストへの参加のみでしたので、久しぶりに比較的余裕をもってイベント全体をみることができましたので、こうしてレポートを書いてみました。(本当はもう少し早めにレポートをあげたかったのですが、このイベント後に顧客先訪問のために訪れたアムステルダムのホテルでPCを忘れたことを再びパリに戻る電車の中で気づき、別のパリのイベントに出展後、日本に戻ってきてようやくPCを手にこうして記事を書いている次第です・・・)


世界的大手広告代理店が仕掛けたスタートアップ向けイベント

このViva Technologyというイベントは、世界的な大手広告代理店、Publicys社がかかわっているイベントであるだけでなく、フランスの大手キャリアOrangeや欧州最大の小売り業者カルフールが関わっているということで注目していました。

Publicys社は世界の広告代理店売上ランキングで毎年大体3位に位置する大手代理店です。日本の電通が大体5位に例年位置しています。


(Publicys社の人が90周年ということで会場内のカンファレンススペースで話していました。エリック・シュミットといったビッグネームによるセッションもあったので、最初はそうしたセッションにも興味があって参加したのですが、実際に会場にきてみると後述の怒涛のスタートアップの出展のほうに興味をすっかり奪われてしまっていました)

当初はこちらのイベントへの出展も少し考えていたのですが、費用対効果が見合わないかなと考えたことや、運よくこの展示会の中で開催されるピッチコンテスト参加のセレクションに通ることができましたので、今回はピッチのみ参加してきました。

数千社が集まったものすごい熱気

ちょっと豪華なスタートアップ向けイベントかな、ということで足を運んでみたイベントでしたが、実際に会場に入ってみると度肝を抜かれました。何しろ出展しているスタートアップの数が桁違いなのです。

テレコミニュケーションと接続性というテーマでOrange社だけで、50社のスタートアップを支援しており、イベントステージを囲むように50社が各社幅約1メートルのスタンドスペースで展示をしていました。この展示スタンドは海外では香港RISEや、日本では今年2月にBRIDGEが行った「THE BRIDGE FES 2016」に近いものだったといえば、伝わりやすいかもしれません。



(スタンドは各社共通のサイズとデザイン)


(Orange社のブースだけで50社のスタンド。)

こうしたブースがOrange以外に、各テーマごとに、そのテーマに関連した企業がスポンサーとなり、17個同じような広さで展示会場全体に広がっていました。フィンテック関連のスタートアップは、グローバルな金融グループであるBNPパリバが同じように50社を支援してスタンドを展開し、小売りに関連したスタートアップをカルフールが50社、オープントランスポテーションをテーマにフランス国鉄SNCFが50社を出展させており、ルイヴィトングループもこうしたスポンサー企業のひとつとして、ラグジュアリーというテーマに関連したスタートアップを支援し、出展させていました。


(ラグジュアリーをテーマにしたスタートアップが集まったルイ・ヴィトンブース)

こうした自動車、小売り、保険、ラグジュアリー、フィンテック、スポーツなど様々なテーマを軸にした17のスポンサーブース以外に、イスラエルや、ベルリン関連のスタンドなどが集まった地域別のブース、La French Techというスタートアップコミュニティを軸にしたブースなどがあり、20を超えるテーマごとにそれぞれ平均して50社ほどが展示をしており、単純計算で1000社が出展していて、ものすごい熱気を放っていました。前述のBridge Fesで100社、香港RISEでも数百社くらいだった(日ごとの入れ替え制だったのでトータルではその倍ということになるのかな)と思いますので、桁違いに多くのスタートアップが出展しているイベントでした。

また単にスタートアップが並列的に集まっているのではなく、スポンサー企業を中心に、ピッチコンテストが展開されていたり、スポンサー企業によるパネルディスカッションやデモンストレーションを交えながら、その周辺にスタートアップのブースが配置されているというのも今まで筆者が参加したイベントではちょっと見たことがない形式でした。


(この赤紫の箱、ひとつひとつに主要な17のテーマのひとつを軸にスポンサー企業とその周辺の50社のスタンドが出展しており、それ以外のスペースにも数多くのスタートアップが同様のスタンドとともに出展していました)

参加者によると、出展者以外に、登壇者やピッチ参加者などを含めて5000社のスタートアップがこのイベントに集まっていたそうです。

だがしかし多すぎる

これだけ多く集まったスタートアップの熱量にただひたすら圧倒されていましたが、厄介なことにこれだけ多く集まるととてもすべては見て回れないのですよね。

会場をしばらく回ってみて気がついたのですが、
・50社のスタンドそれぞれに平均1分ほどしかかけなくても1時間近くかかる(50社の中で良さそうなところに重点的に時間をかけてチェックしてみようとしても同じくらいかかる)
・こうしたスタンドが集まったブースが20近く会場を埋め尽くしているので、そのペースですべてを見ようとすると最低でも20時間かかる。会期が3日間あるとはいえ、会場内にはピッチコンテストや、デモンストレーションなども各ブースで開催されているため到底全部は見切れない、というか不可能
ということで、どうしてもそれぞれのスタンドに足を運ぼうとするよりは、大枠での全体の雰囲気を感じながら、会場を巡ってみるという回り方になってしまいました。

Bridge Fesや香港RISEくらいの100社から数百社くらいまでの規模なら、もう少しひとつひとつをじっくりと見てみようという考えもでてくるのですが、これだけ集まってしまうと、その中からチェリーピックしようという気もちょっと失せてしまいますね。

興味があるテーマに特化してみて回るということも当然できるのですが、他の参加者に感想をきいてみても同じような印象をもった人が多かったようです。各スタンドが共通ブースであるが故に、視覚的に統一感があるのも逆に一目でサービスの違いやスタートアップの違いを認識したり識別するのが難しいという弊害も出ているように感じました。


(ひたすら奥までスタンド、スタンドが続いてます)


(イベント全体として統一感はでるものの、来場者としては、サービスの特性や違いをひとめでみるのが難しかった共通スタンド。特に最終日はPublic Dayだったこともあり、資金調達といった出展者の目的にはあわなかったからかスタンドから人が離れていたり、スタンドにいるよりは営業にまわったり、あるいはそもそも足を運ぶ人が少なくて暇そうにしているスタンドも数多くありました)

そうした中、IoT系の展示スタンドは、ひとめで物理的なモノをビジュアルとして提示できることもあり、他よりも人を多く集めているケースが多かったように思います。手前味噌ですが、弊社を含めてハードウェア系のベンチャーはこうしたところがメリットのひとつではありますね。展示会にもっていく荷物がどうしても大がかりになってしまうので、展示準備も撤収も大変になってしまうので大変なのですが、視覚的に有利でアテンションを集めやすいというのはやはりありがたいことだな、と再認識しました。


(ハードウェア系のスタンド。初日、二日めは来場者が関係者か€390の有料チケットを購入した人に限られていたので、それほど来場者は多くありませんでした)


(最終日土曜日のPublic DayのIoT系スタートアップを中心としたスタンドスペース)

スタートアップ向けイベントはもうIT業界のためのものじゃない

もし自社が出展していたら、と考えるとこの出展者数のあまりの多さは逆に個々のスタンドの集客にとってはマイナスではないかとも感じましたが、これだけの熱量は、この数のスタートアップと、それを支援するスポンサー企業が集まならければ生じなかったように思います。

テーマごとにスポンサー企業が支援するという形は、これまでこうしたイベントをリードしてきたIT業界から、インターネットやスタートアップというものがある種、当たり前となり、各業界をリードする既存のプレイヤーがイニシアチブをとるようになってきたと感じさせられるものでした。

フランスでも数年前まではLe Webというイベントが、そうしたIT業界、スタートアップコミュニティから発したものとして有名で、過去に2回参加しましたときにはルノーなどの既存の大手企業はあくまでも会場の盛り上げ役として脇役的にスポンサーをしているという印象を受けました。

今回のイベントは、そうした従来のスタートアップ系イベントとはまったく異なるもので、見ていて世界的にもこのように潮目が変わっていくのでは?と感じさせられるものでした。

日本でいえば、トヨタ、JR、イオン、第一生命といった大企業中心にこうしたスタートアップをけん引していくところがトータルで15社以上集まっているのを想像していただければイメージしやすいかと思います。しかもこうした企業が10社、20社という単位ではなく各社50社という単位で支援しているのを考えればでその物量、影響力は凄まじいものになると想像できるのではないでしょうか。

フランスは世界最大の家電見本市、ラスベガスのCESにも今年初めハードウェアスタートアップを100社以上送り込んでおり、ある種、アメリカ以上に熱量が高いところがあります。


(フランスのテレビ局TF1は主にメディア関連のスタートアップを支援)


(ホテルグループAccor Hotelsはツーリズムやおもてなしに関係したスタートアップを支援)


(フランス国鉄SNCFはトランスポテーション関連のスタートアップを。鉄道に限らず、ライドシェア関連のスタートアップも展示していました)

最近のスタートアップ系イベントでは参加していて、日本・海外を問わず、どうしても登壇する大御所がマンネリ化したり、固定化したりするという弊害が少なからずあるように感じることが多かったのですが、今回のViva Technologyでは、数が多すぎてどこにフォーカスしたらいいかがわからない反面、圧倒的な数を集めたことにより生じた熱量や、IT業界ではない業界が主導することで、これまでには体験できなかった新鮮さを感じることができたように思います。

グーグルやFacebookですら注目が得られない世界

このViva Technologyには、FacebookやGoogleも出展していましたが、会場の中では地味な存在であるように感じられ、それほど集客もないように見受けられました。

グーグルやFacebookは他のイベントでもブースを出展していたりするということもあるでしょうし、1社のサービスをみるよりは、各テーマごとに50の異なるスタートアップのサービスをチェックするほうが、イノベーションの多様性ということでより来場者にとって興味深かったのではないでしょうか。


(facebookブース)


(googleブース)

FacebookやGoogleもいわばIT業界発の企業なわけで、このViva Technologyでは、そうではないプレイヤーがやはり存在感を放つようなものとなっていました。

ピッチコンテストに参加して

今回、このViva Technologyでは展示会の中で、数々のコンテストが会期前や会期中に開催されており、会期前に選考がったひとつのピッチコンテストに応募してみたところ、運よく選考が通ったので参加してきました。



こうしたピッチコンテストは私が参加したもの以外にも様々なテーマごとにイベント会期中だけでも20以上ありました。(このイベントに出展するためのコンテスト、というのも会期の事前にありました)

通常、スタートアップ系のイベントでは、イベント全体を通して単一のピッチコンテストが行われるといったものが主流で、数が多くてもテーマ別に5つくらいに絞られているものですが、同時並行で様々なテーマで20ものピッチコンテストが行われるというのはかなり珍しい部類に入るのではないかと思います。

ひとつひとつのピッチコンテストに対する集客やメディアの注目は分散されますが、多様な接点や機会が多くのスタートアップに生まれるという意味で面白いな、と参加しながら感じさせられました。

この手のスタートアップイベントには弊社もいくつか参加してきていますが、参加しているスタートアップの数が100以上と多くなってくると、どうしても出展することによりメディアに取り上げてもらえる機会は少なくってきます。展示しているだけではあまり意味がなく、むしろ講演やピッチに参加するほうがメディアに取り上げてもらえる機会が多かったりするといった場合も往々にしてあったりします。

またスタートアップ中心の展示会は、VCや投資家との接点を広げるには効率的ですが弊社のような資金調達のニーズは今はなく採用にもそれほど困っておらず、商品のバイヤーとなる人との接点を増やしたいと考えている会社にとっては魅力的ではなかったり、そのイベントとその会社があまりマッチングしていないというケースもあるのではないかと思います。

今回のイベントはスポンサーとなっているフランス企業や出展しているスタートアップの中にも顧客や面白い関係性が構築できるところがあるかもしれないと考えて出展も少し検討したのですが、結果的にはコストをかけず選考に通ることができたスポーツ関連のサービス・製品を提供するスタートアップをテーマにしたピッチコンテストにて、弊社のスポーツ関連IoT製品を中心にピッチを行ってきました。


二社めとしてピッチした後、審査員に呼んでいただき質問をいくつか受けたので(一社めのピッチの後では起きなかったことなので)結構、感触がよかったかなと思ったのですが、その後ピッチを行ったスタートアップも数社続けて弊社より長めに質問を受けていたため、二番手、三番手の結果に終わったかなと思いながら荷物をまとめていたのですが・・・


なんと、運よく優勝することができました。

正直、ピッチコンテストに参加したのは優勝自体があまり目的ではなく、こうした展示会で来場者向けに自分たちをPRする機会を極力コストをかけずに得られれば、と考えてのことだったのですが、フランス市場進出への製品の一定期間の無償マーケティングサポートをピッチコンテストに優勝した成果として得らることになり、弊社にとってとても有意義なものとなりそうです。

ちょうど自分がピッチしていたときにピッチ主催者が無料カクテルを振る舞っていたため、観客がこのコンテスト中に一番多く、そのカクテルがなくなってしまったあと、観客がどんどんと減っていっていたということがありましたので、主催者側が準備したお酒を出すタイミングに助けられたような気がしています。


(こうしたピッチコンテストは観客がさっぱりということもあるので、それを覚悟していったのですが、お酒につられて人が集まっているタイミングで発表できたことにより、結構多くの人にみていただくことができました)

今回はPubicys 90周年ということもあって開催されたイベントだった?のかもしれませんが、今までの有名なスタートアップ系イベントとはかなり雰囲気が異なっており、多くのスタートアップにとっていろいろな意義が得られたイベントだったのではないかと思います。

問題点もいくつかみられましたが、もし来年開催されるとしたら、より洗練されて魅力的なイベントとなると思いますので、海外進出を考えているところにとっては注目しておいて損はないイベントだと思います。



これからのスタートアップエコシステムは変わっていく?

ということで、まとめとしてはつたないのですが、スタートアップイベントとして世間の方向性が、IT業界から軸を大きく移してきて、異なったエコシステムを今後は生じていくことになるのではないかということを肌感覚で得ることができるイベントでした。フランスはアメリカとも違った意味で面白いですね。

アメリカで、グーグル、Facebook、マイクロソフト、Amazon、セールスフォースといった会社の存在感がなく、その他の大手企業がスタートアップを大きく盛り上げているイベントというのは想像しにくいと思いますが、それをまさに体現してみたという面白みがこのイベントにはあり、特にフランスを代表するブランド、ルイ・ヴィトングループがこうしたイベントで存在感を出していたのがとても印象に残りました。