Thursday, May 31, 2018

これはいいものだ(・∀・)エアファイターコレクション

アシェットから新登場しているエアファイターコレクションの第一作をレビューさせていただく機会がありました。

エアファイターコレクション


結構箱が大きい(厚い)です。

中の機体のサイズがわかるようにUSBドライブを比較においてみました。かなりの存在感があります。


早速、開封してみてみました。この存在感で初号799円。他の号と組み合わせなくても、単体で機体として成立していて799円というのはかなりお得なが気がします。

以前、毎号届くパーツを組み合わせると、長さ60cmの巨大な『F-4 EJ改をつくる』というシリーズがあったようですが、これは単体で完結するのがいいですね。

大きさも1/100スケールで長さ19.2cm。


ディテールも塗装もかなりしっかり作り込まれています。第一号は航空自衛隊のF-4EJ改スーパーファントムII。

機体だけではなく、可動式ディスプレイがなかなか良いできで、好みの機体アングルで展示ができるだけでなく、このように撮影をするのにも役に立ちます。iPadに航空写真の画像を表示して、上空を飛んでいるかのような演出をちょっと試してみました。

初回がF-4EJというベテランモデルをもってくるところが渋いですね。

2号のコレクションはF-14Aトムキャット。


個人的に気になる機体はVol.05のハリアー、Vol.11のF-2B。11号までだとちょっと先だなぁw

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ブログタイムズ

Saturday, February 24, 2018

下町ボブスレーはなぜジャマイカに選ばれなかったのか?


もう平昌オリンピックが終わってしまいますが、Facebookなどで断片的に書いていたことをブログでまとめてみたいと思います。話題になり始めていた2月9日頃から書き始めていたのですが、経緯を追っているうちにまとめるのがこのタイミングとなっていました。

平昌オリンピックが始まって下町ボブスレーが良い意味でも悪い意味でも話題となりました。



契約上の細かいことについては当事者同士でないと正確なことは知り得ないでしょうし、どちらが正しいか間違っているということもなく単に契約上ペナルティーを支払う必要があるのであれば、それをジャマイカが支払う必要があるというだけでしょうが、下町ボブスレー側としては実際に訴える行動をとらないようですね。


私がこのニュースを最初に耳にしたとき気になったのは『ジャマイカはなぜ下町ボブスレーを選ばなかったのか?』ということでした。

もちろんジャマイカ側が、下町ボブスレーが自分たちにとって一番あっていてタイムを出すことが期待できる、と考えていたのであれば、何か不正などが絡まないかぎりは下町ボブスレーを選ぶはずなので、他のソリを選ぶのには、他社製のソリのほうがタイムがでると考えたのでしょう。

下町ボブスレーは確かに高い技術力で作られているかもしれません。しかし技術力というのは急速に陳腐化していくものでもありますし、その差は世界的に広がるよりも縮んでいく傾向があります。優れた加工製品をつくる工作機械が日本製であるなら、その日本製の機械を導入できる機会は誰にでもありますし、古い機械で技術を磨いていた工場よりも、最新の機械を導入して、ひと足ではなくふた足も先に何もない状態から最新の技術についての知見と経験を積んだほうが良いものが作れる場合もあるかもしれません。

そうした事例を私は深センの工場に百台規模で並ぶ日本製のCNCの機械の列をみながら考えさせられたりしています。


また熟練にしかできない優れた加工技術があることが、必ずしもプラスに働くとは限りません。むしろマイナスに作用することすらありえます。

例えば、熟練にしか制作できないパーツがあるとしたら、そのパーツは他では代替することは難しくなります。制作コストもあがりますし、故障した場合の交換やメンテナンスの難度も増します。


もしこのパーツが3Dプリンタで誰でも制作できるものだったとしたら、どうでしょう?そうなると特定のエンジニアだけではなく、ボブスレーをしているプレイヤー自身がパーツをつくることができるかもしれません。練習のたびに自分でいくつものバリエーションがある自作パーツを試してみたり、練習のときに気づきがあれば、翌日までにそのアイディアを反映したパーツを制作して試すことができるかもしれません。


また技術力は良い製品をつくるためのひとつの要素でしかありません。製品をつくるための体制、かけられる労力、キーとなる優秀な人材がいかにその能力を発揮できるか、検証・テスト体制、検証の頻度や容易さ、など様々な要素が絡み合います。

そうした様々な要素がある中でなぜ下町ボブスレーが選ばれなかったのか?

当事者ではないので、知りうる情報はかぎられますが、下町ボブスレーを作り出してきた人たちによって執筆された「下町ボブスレーの挑戦」という昨年の12月末に出版された書籍を読みながら、その要因を考えてみることにしました。


下町ボブスレーの挑戦 ジャマイカ代表とかなえる夢下町ボブスレーの挑戦 ジャマイカ代表とかなえる夢
細貝淳一 奥田耕士

朝日新聞出版 2017-12-20
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敗因の分析というのは、心地よいものではない方もいるかもしれませんが、当事者ではない外部の人ではないとなかなか言いにくかったり、書きにくい意見もあるかもしれません。以降の分析は下町ボブスレーを批判するものではなく、今後、下町ボブスレーがより飛躍していくためのきっかけとして参考にしていただける情報と捉えてもらえると嬉しいです。
またこうしたことは下町ボブスレーだけではなく、類似性はないかもしれませんがホンダがF1でなかなか勝てないといったことにも関連があるのかもしれません。日本では利用者と制作者の立場が良い意味でも悪い意味でも最適化と役割分担が進みすぎてしまっていて、そのあたりの断絶に日本のものづくりがひとつの袋小路に落ちいっている要因があるのではないか、と個人的には考えています。下町ボブスレーだけではなく、より大きなものづくり全般への課題を考えるきっかけと捉えていただければと思います。

少し前置きが長くなってしまいましたが、『下町ボブスレーの挑戦』のなかで気になった箇所を引用させていただきながら、このボブスレーがジャマイカに選ばれなかった原因の一端を探ってみたいと思います。

ソチ五輪直前に日本代表チームの選手・監督は外国製のソリを選択した。下町ボブスレーは2013年11月に日本連盟から「テストする時間的余裕がない」との理由で最初の不採用通告を受ける。P. 3
現場の監督・選手はラトビア製ソリの使用を希望していた。下町ボブスレー側は新型車に改修を加えて熟成する、というものづくりの常識でスケジュールを組んでいたが、競技者側はカルガリーに届いた瞬間に完璧なソリを求めていた。ポイントを稼いで五輪出場権を手に入れなければならない競技者側に、下町ボブスレーの改修に付き合う心の余裕はなかった。p.14

4年前も今回と同じように、オリンピック直前で国は違えど、下町ボブスレーではなく、ラトビア製のソリが選ばれています。

ここで見受けられるのは、納期の意識の差ですね。下町ボブスレー側は、実際の試合の中で熟練させていくことを考えていたようですが、採用する側は試合の時点で完成されているものを求めていました。

これはハードウェアにかぎらず、ソフトウェアの世界などものづくり全般に見受けられることで、結構あるあるな話でもあり、こうした意識のずれが、今回もあったのかもしれません。
それまで明るく軽いノリで活動してきた下町ボブスレーが、初めて経験する沈痛な雰囲気の説明会。重苦しい空気を破って発言したのは、プロジェクトのスタート当初から協力していた元日本代表選手の脇田だった。 
「外国製ソリとの比較テストは、ラトビア→ラトビア→下町ボブスレーの順で3本滑走していますが、ボブスレー競技では滑走のたびにコースが荒れて、後ろの滑走順ほどタイムが落ちるのは常識です。このわずかなタイム差は、むしろ同等の性能であることを示していると言ってもいい。そもそも、こんな重要な比較テストを3本の滑走だけで決めるなんておかしい。滑走順を入れ替え、十分なテスト時間を確保するべきです」p.15
こちらの発言は落ち込んでいる下町ボブスレーのメンバーを勇気づけるためのものだったかなと思います。ただ、このエピソードが下町ボブスレーが決して遅くはなかったというふうにもとれるような形で紹介されています。

確かに滑走順が後ろなら、同等のスピードなのかもしれません。ただ、明確に速いと言えるわけでもなく、ある意味希望的観測ともいえます。書籍全体を通して、こうした推測に基づく楽観的な説明が多いのが気になりました。

また、ここで指摘されているラトビア製ソリとの比較テストですが、おそらくラトビア製のソリを入手したり、同一条件で比較テストを下町ボブスレー内で行うことが難しかったのだろうと思われますが、そうしたApple to Appleのテストがなされたような記述をみつけることはできませんでした。また最後まで、このラトビア製のソリに関する特徴や、技術的優位点などに関する記述を見つけられませんでした。

この書籍が、そうした技術的観点を説明するためのものではないからかもしれませんが、4年前にラトビア製のソリに選考で破れているのであれば、ラトビア製のソリとどう違うのかの検証がなされるべきだと思いますし、ラトビア製のソリが速い、あるいは選ばれた理由が分析されるべきだと思うのですよね。

ところが、この下町ボブスレーの挑戦の書籍の中では、自分たちのソリづくりに関する挑戦についての記述は見つけることができても、ラトビア製のソリに関する技術的なコメントや記述はみつけることができませんでした。

敵に勝つにはまず敵を良く知ることが必要とはよく言われることですが、書籍からは、敵について具体的に知ったり、知ろうとしている部分はみつからずもどかしい思いをしました。

少し言い過ぎとなってしまうかもしれませんが、良い結果の報告はあっても、客観的に下町ボブスレーのポジションを把握しようしとしたり、第三者にも客観的に下町ボブスレーの速さがわかる記述がとても少ないように感じました。

この後、下町ボブスレーのソリで全日本ボブスレー選手権で準優勝を勝ち取るエピソードが紹介されます。しかし、優勝チームは、
『(前略)ライトビア製ソリが海外にあるため、長野市が保有するドイツ・シンガー社製のソリで出場することになっていた。「下町ボブスレーvs実績のある外国製ソリ」の構図である。p.19』
と、ラトビア製のソリに乗っていたわけではありません。また日本のボブスレー界の層やレベルが海外に比べると高い水準にあるわけであはなく、出場チームも男性6チームの中の準優勝ですから、これがどれだけ高い水準なのかはわかりません。

前述のドイツ・シンガー社製のソリについても、いつ製造されたものなのかやメンテナンス状態もわからないので、この全日本選手権準優勝という結果だけでは、ラトビアのソリに対して、下町ボブスレーがどうなのか良くわからないのですが、こうしたもやもやを最後まで抱えたままこの本を読了することになります。

続いて元ボブスレードイツ代表のハルトルさんが下町ボブスレーをテストしたときのことが紹介されます。
「ボブスレーでは、ソリは重いほうが有利だ。体重の軽い日本人選手が乗るなら、ソリ本体をもっと重くしてもいいのではないか」 
「2号機は小型・軽量化を開発コンセプトにしています。最初に作った1号機は、これより30Kgほど重く、全長も長いです」 
「そのソリにもぜひ乗ってみたい」 
(中略)テストを終了したハルトルさんは、なんと「私は、1号機が一番好きだ」と言った。考え抜いて小型・軽量化した2号機、さらにそこから日本代表チームの27もの改修希望に応えた3号機より、手探りで初めて作った1号機の方がいいと言われるのだから世の中わからない。 
ソリで氷の坂を滑り降りる時、重い方がスピードが出ることはみんな知っている。国際連盟は、条件を平等にするため、レギュレーションでソリ単体および、選手が乗った時の総重量の最大値を規制している。このため世界のボブスレー界では、軽いソリに体重の重い選手が乗るのがトレンドとなっている。軽いソリの方が、スタートダッシュで押し出しやすい。さらにソリは極力軽量に仕上げ、総重量を調整するためのウェイトを、ソリのなるべく真ん中、なるべく下につけることで、カーブを曲がる時の安定性を確保するのが定石だった。 
2号機の「小型・軽量化」という設計思想が間違っているとは思えない。ハルトルさんの1号機好きを聞いた細貝は、 
「クルマの好みが人それぞれ違うように、ボブスレー選手にも重厚なソリが好きな人、軽快なソリが好きな人といった好みがあるようだ」と考えた。p31-33
これを読んで、なぜ人によって好みがある、という結論になるのかわかりません。ハルトルさんは明確に小型・軽量化された後の機種よりも重い最初の機種がいいと言っているのですから、それを重厚なソリが好きな人もいるのだ、と解釈するのは事実を自分が解釈したいように解釈しているようにも感じられます。

また重い方がスピードがでるとはっきりかかれているのですから、ソリはレギュレーションが許容する限り重いほうがよいはずです。軽いほうがいいというのは、総重量において、選手の体重に対して、相対的に軽いソリのほうが有利ということであって、特定の選手が押さなくてはいけない重量が変わるわけではありません。レギュレーションよりも軽い場合はウエイトが追加されるわけですから。

例えば、総重量規制が200Kgの場合、120Kgの選手に対して80Kgのソリという組み合わせになりますし、80Kgの選手の場合は120Kgのソリとなります。この場合、120Kgの選手のほうがスタートダッシュが有利になるわけです。

ですので、ソリ自体は総重量規制めいっぱいに重くなるように、ウェイトも追加するのであれば、ソリ自体は規制を満たしているのなら無理に軽量化する必要はないのではないか、と上記の文章を読む限り読み取れます(もしかしたら他に理由はあるのかもしれません)。

また軽量化により、逆に剛性の面では不利になりやすいでしょうし、後付のウェイトのほうが振動しやすかったり、ソリと一体性を保つためにも不利な点がありそうです。

ここの記述を読んでも、小型・軽量化の設計思想が正しい理由がわからないですし、ハルトルさんも述べているようにそうでないほうが正しいのかもしれないと思えます。少なくとも小型・軽量化の方針が間違っていると思えない、という結論にはこの説明からだと辿りつけません。

続いて2014年12月に入って日本連盟から連絡が入り、女子選手が下町ボブスレーで滑走することになります。
初めて下町ボブスレーで滑走した女子選手の感想は、「これまではまっすぐ走らないような古いソリに乗っていましたから、ハンドルを切った通りに通りに曲がるのが嬉しいです。下町ボブスレーは素晴らしいソリですね」といったものだった。外国製の新型ソリは1台300万円から500万円する。個人スポンサーに新車を提供してもらえるのはトップ選手だけであり、そのほかの多くの選手は先輩から引き継いだ古いソリをだましだまし使っていた。最初の連絡から5日後には、日本連盟から「選手が全日本選手権終了後も下町ボブスレーを使わせてほしいと言っています。1月6日から21日までの合宿にも提供してもらえませんか」との打診が再度入った。下町ボブスレーの保有台数を増やし、選手を支援する活動は選手たちに好意的に受け止められたようだった。しかし、北海道連盟所属の押切麻李亜選手は、下町ボブスレーを選ばなかった。彼女が乗るのはラトビア・BTC製のソリ。p85-86
ここでわかるのは、トップ選手である押切選手はBTC製のソリを選択し、お古のソリを使っていたその他の選手が下町ボブスレーを使用したということです。下町ボブスレーには対価がどのくらい払われたのか払われなかったのかわかりませんが、文面から察するにそれほど大きな対価ではなかったのではないでしょうか。無償だったのかもしれず、見方によっては便利に使われた状態だったのかもしれません。

そして押切選手がなぜBTCのソリを選んだのか、下町ボブスレーとの違いは何だったのかということについてはこれ以上の記述はありませんでした。

また2014年11月にはドイツでボブスレーの一部であるランナーのテストが行われています。
今回の欧州遠征では下町独自のランナー2セットを持ち込み、欧州製ランナーとの比較を行った。その結果、滑走タイムは欧州製の方が速かった。長い歴史と経験を持つ欧米チームを簡単には追い越せないが、下町プロジェクトも着実にノウハウを積んでいった。p.91
ここで章を終えています。事実としてわかるのは欧州製よりも遅かったということ。必要以上に悲観的になる必要はありませんが、具体的にどうした対応がされたのかや、どうした部分に差があるのかといった記述がないまま、前向きな結びとなっているのは、ここだけでではありませんが精神論に寄ってしまっているように感じました。

続いて2014年12月22日の全日本ボブスレー選手権の公式練習のエピソードが紹介されます。

(前略)そして、北海道連盟の押切選手はラトビア・BTCのソリで参戦した。会場となった長野スパイラルのスタートハウスには、前年まではなかった関係者以外立ち入り禁止のロープが張られ、ライバルチームに自分のソリを見せない、というピリピリした空気が漂っていた。下町メンバーは、多くの日本人選手に最新のソリを提供するというコンセプトで全日本選手権に参加していたから、この雰囲気にとまどった。p.92
この記述から読み取れるのは、BTCのソリを簡単に調べたり、比較テストできるような状況は少なくともこの時点ではなかったということです。(そして前述のようにBTCのソリに関する技術的特徴に関する記述はこの先にも後にもこの本からは見つけることができませんでした)

2015年の後半に入り、新型のソリの開発スケジュールが決められます。

部品の納期は8月末に設定、9月に組み立て、10月には出荷、10月半ばから欧州で下町プロジェクト独自の滑走テストをするスケジュールが示された。ドイツのハルトルさんの自宅に保管してもらっている2号機・4号機と、これから作る新3号機・新5号機を比較し、一番性能の優れたソリを日本連盟のテストに送り込む作戦だった。
日本連盟は11月にドイツで外国製ソリと下町ボブスレーの比較テストをすると言っている。p.114-115
このスケジュールですと、11月のテスト前に、下町ボブスレーの滑走テストが始まるのが10月半ば。数週間しかないので大きな修正、調整は厳しいように思えます。この短い期間の中ですでに実績のある外国製ソリに対して、ソリを熟練させていくにはかなり心細いテスト期間であるように思えます。

そしてテストの結果、ドイツ・シンガー社製のソリが日本連盟には選ばれます。

下町ボブスレー新3号機は、初日は滑走タイムは1勝1敗で、最高速度は1キロ前後速かったのですが、二日目はドイツ・シンガー社のソリより1秒近く遅いという結果に終わります。
1回目と2回目のテストの間に、何があったのかー。栗山に確認すると、滑走タイムを左右するランナーは2セット使っており、初日と2日目で入れ替えていた。慣らし運転の初日は良い方のランナーを下町ボブスレーに取り付け、2日目はドイツ・シンガー社のソリに取り付けたのだろうか。また、初日は下町ボブスレー新3号機の方がやや重い状態のまま滑走し、1回目のテストで同等のタイムが出た後、ドイツ・シンガー社のメカニックが自社のソリを完全に分解し、下町ボブスレー新3号機と重量をあわせるウェイトを積んで完璧に整備し直したこともわかった。p.143
「下町ボブスレーも非常に良くできたソリだと評価しています。でも、シンガーはその場でソリをバラバラにして組み直す。日本では誰もそんなことをやらなかったからびっくりしました。シンガー社は社長自ら現場に来て、ソリをチューンナップしてくれます。(後略)p.144
これ以上、具体的な要因に関しては記述を見つけることができなかったのですが、シンガー社と下町ボブスレーに同じ機会が与えられていない以上、これが理由だとするとちょっとかわいそうな気もします。

ただ、同等の速さを示したということは、決め手となる速さを示せなかったともいえます。またメンテナンスの容易さや、サポート体制は、下町ボブスレー側にもそうした機会が提示されなかったかもしれませんので、そこが下町ボブスレー側に欠けていたというわけではなかったのでしょうが、ここは他社のほうに分があったということなのかもしれません。

その後、新たにジャマイカチームと組むことになった下町ボブスレーはジャスミン選手に提供した6号機で振動が大きく、コーナーでヘルメットがボディにあたって危険であるという指摘を受けることになります。
(前略)しかし、今シーズンの今後の大会についてジャスミン選手は、鈴木に、「6号機には乗らないかもしれません」と告げた。そして、1月23日開催のレイクプラシッド大会にジャスミン選手はトッド氏が以前に制作したソリ「OB1」で出場し、3位に入賞。ジャマイカチームは、ボブスレー競技で初のメダルを獲得した。下町メンバーの脳裏に、日本連盟がソチ五輪直前にラトビア製ソリを選択した苦い記憶がよみがる。p.253
この出来事が約1年前の2017年1月のこと。下町ボブスレーではないソリで滑走したことで、それまでの最高位で入賞しメダルを受賞します。

これ以降は、直近のことでもあり、前祝いや下町ボブスレージェット就航のエピソードなどが語られて、平昌オリンピックへの展望などが語られて本は終えています。

ただ最初から最後まで、ラトビア製のBTCのソリに対して、下町ボブスレーはどうなのか、ラトビア製のソリはどう優れていて、それに対して下町ボブスレーはどういった優位性があるのかをうかがい知るような記述はみつけることができなかったのが気になりました。

最後に下町ボブスレーネットワークプロジェクトのゼネラルマネージャー細貝淳一氏がジャマイカチームが下町ボブスレーを使用しないことが話題となった最中に書いたブログ記事に触れてみたいと思います。

ジャマイカ連盟との交渉について

この記事の中では、
ジャマイカ連盟は昨年12月のワールドカップ参戦からラトビア・BTC社製ソリの使用を始めました。直前の11月に行われた北米杯では10号機を使用し銀メダルを獲得しており、レポート内容も良好なものでした。
と成果が紹介されています。ただ、はてなブックマークでは、
『11月に行われた北米杯では10号機を使用し銀メダルを獲得しており』ご丁寧に北米杯へリンクしていたので見てみたらトップ選手は参加しない下のカテゴリーの大会で一位はジュニアの選手(平昌五輪不参加)やないか!  
とのコメントがありました。
オーストリア代表女子選手で12/9のワールドカップにて5位獲得のBEIERL Kartin選手がテスト滑走しました。ジャマイカチームがBTCを持ち去ってしまったため、比較対象はドイツのワルナーというソリにしました。このソリはテストを開催したインスブルックのコースで最速と評価されており、そのソリとリザルトタイムのデータにおいても滑走評価でも同等でした。下記数値データを参照ください。Japanが下町ボブスレー10号機です。この数字・データによりジャマイカ連盟が指名したオーストリア人技術者は「下町ボブスレーはBTCより速く、ワルナーと同等」と評価しました。
と紹介されています。
こちらのテストでは、ワルナーと同等のタイムが出ているようです。ただ紹介されているテスト結果の画像をみてみると、BEIERL選手よりも早いタイムをBEIERLさんの上のGEIGER選手が出しており、こちらの選手がどんなソリを使用していたかも気になるところです。
オーストリア人技術者のコメントが気になりますが、主観的なコメントのみの情報では客観的な判断が難しく、より詳しい情報がほしいところですね。

ということでいろいろと要因について、下町ボブスレーに関する書籍から探ってみましたが、下町ボブスレーがオリンピックに選ばれなかったにせよ、日本選手やジャマイカチームの強化に一役買ったことや大きな貢献になったことは間違いないと思いますので、この点については言及しておきたいと思います。

またこの下町ボブスレーについて、近日、2月27日に、テレビ局でも下記のような番組が放送される予定となっています。

「下町ボブスレー」騒動の真相に迫る、27日テレ東

私もこの番組を視聴してみて、今回下町ボブスレーが選ばれなかった要因にどのような要因があったのかを考えてみたいと思います。

Saturday, January 20, 2018

クラウドファンディングを始めたら深センの大手工場から連絡がきた

昨年の12月にInfinity Ventures SummitのLaunchPadというスタートアップの登竜門となるピッチイベントに登壇させていただき、そのタイミングに合わせてクラウドファンディングキャンペーンを開始しました。

Indiegogo: hackfon - Turn Your Analog Phone to a Smart Remote

本来なら、もう少し準備が整った段階でスタートさせたかったのですが、前述のイベントに登壇できるという機会があったため、まだコンセプトから半歩進んで理論試作品ができているという段階でしたが、低めのターゲットでクラウドファインディングを開始。おかげさまで1週間ほどでターゲットを達成させていただくことができました。

突然Facebook Messengerに届いたメッセージ

そのターゲットを達成する前、まだ2000ドルも支援が集まっていない段階で、あるFacebookメッセージを受信しました。

30年以上EMSを行なっている会社から、このhackfonという製品の製造パートナーになりたい、との連絡でした。

馴染みのない方のために説明させていただくと、EMSというのは海外に安価に荷物を発送できる郵便局のサービスではなく、製造受託で電子機器などを生産するElectronics Manufacturing Serviceのことです。

このメッセージを突然Facebook Messengerで受け取ったときには、詐欺かな、と思いましたが、先方の会社のHPをみてみると、とてもしっかりとしている様子。

やりとりをしてみると、本社はシンガポールにあり、工場が深センの近くの東莞にあるとのこと(タイトルには伝わりやすいように深センの工場としましたが、正確には深センのお隣の東莞です)。たまたま、連絡を受けた翌週くらいから、深センにあるジェネシス社さんにて、工場の工員として体験インターンをする計画を立てていましたので、その機会に足を伸ばして、先方の工場に伺ってみることにしました。

(その時のインターンの様子を、一緒にインターンされていた伊藤亜聖さんがブログにまとめられています:深圳在外研究メモ No.43 電子製品製造受託のJENESISでインターンしてみた編~緊張感がないと日本市場向けのモノは作れない )

行ってみて驚かされた巨大な工場

深センでインターンさせていただいてる1週間の合間に、深センから高速鉄道で1時間弱のところにある駅に移動し、先方のお迎えで、工場へと向かいました。


工場に近づくと、車の中だったので全景を撮れなかったのですが、かなり大きな工場。あとで聞かされたところ、サッカーコート11面の広さがあり、この写真の左手が4階建ての工場棟、右手が倉庫棟で、倉庫のさらに右隣に、従業員用の寮が併設されているというかなりの大規模な工場でした。

従業員数は3500人。ちかくに1/4ほどの大きさの第二工場があり、さらに徒歩数分のところに第三工場の建設に着手したとのこと。


こちらの工場では、製品の金型から一貫して全て自社内で生産しているそう。ちょうど年末で清掃日で生産を行っていなかったため、製品が映り込む心配がないということから工場内をかなり自由に写真撮影させていただくことができました。

こちらが主に製品のプラスチック外装などを生産しているフロアー。

ずらっと並んでいる金型をインジェクションする機械。写真に映り込んでいない機械もかなりあったのですが、これだけでも相当な規模です。

一つ上のフロアーにあがると組み立てのライン。こちらも何百人単位で作業できる巨大なスペースでした。

さらに上のフロアーにあがると、ずらっと大量のPCBの機械が。窓越しだったので、あまり広角で撮影できなかったのですが、何台あるんだろ...。

こんな感じで、機械の清掃やメンテナンスをされているところでした。

こちらのお二人に工場をかなりくまなく紹介いただきました。


ハードウェアスタートアップを支援するEMS

さて、当然の疑問ながら、まだ歩き始めたかどうかも定かではないハードウェアスタートアップになぜ声をかけていただいたのだろう?という疑問がでてきます。

弊社でクラウドファンディングを始めた製品が、アナログ電話機に繋げると、アナログ電話をダイヤルすることでIoT機器やWebサービスを操作することができるスマートリモコンに変えてしまうというものです。いわば、電話機のダイヤルを、プログラムできるAmazonダッシュボタンのように使うことができ、特定のボタンやダイヤルの組み合わせによって、HueライトなどのIoT機器をワンタッチで操作したりすることができます。

こちらのEMSは30年以上、電話機を製造しており、現在の主力製品が電話機やルーターなどといった通信機器と、LEDなどの照明機器なのだそう。

そうしたことから、hackfonというアナログ電話機という枯れた技術を活用し、スマートデバイスとして生まれ変わらせるというコンセプトの弊社製品に興味をお持ちいただいたのだそうです。

それにしても、このようなかなりの大手と思われる会社が、このように迅速に動かれるとは...。

話をきいてみると、私も拝見したことがあるフランスのハードウェアスタートアップの製品の設計や、製造を手がけていたり、blinkという昨年Amazonに買収された会社のスマートセキュリティーカメラ製品はこちらで量産化のための設計や製造がされているのだそう。


こちらの会社に訪問したあとのCES Unveiledと、CESでもblinkという会社のブースをみることができました。

 (CES Unveiledにて。スタッフの方がちょっと疲れたような表情をしている写真になってしまいました...)

こちらのblinkのセキュリティーカメラですが、すでに何万個も(しかも後半のほうの数字が)販売されているとのこと。スマートセキュリティーカメラという、悪く言えば今どきですごく際立った特徴があるわけではないのですが、$99という手頃な価格で購入ができ、Amazonでも900以上のレビューがありながら評価が4以上という高評価を保っています。

そのあたりがアマゾンによる買収の決めてにもなったのでしょうね。

ただこちらの製品は、Best BuyではEコマースサイトや店舗などでも探してみましたが販売されていない模様。もしかしたら、販売マージンの低いAmazonでの販売に特化した価格設定を行っているのではないかと思いました。

貪欲な深センの製造業

こちらの会社はシンガポール本社で、本工場が東莞にあるということで、他の中国本社の製造業と一緒にするのは、適切ではないかもしれませんが、次の成長機会のために、弊社(FutuRocket)のような小さなスタートアップにも声をかけていただくような貪欲な姿勢には敬服させられました。

工場をみせていただいただけではなく、NDAも弊社フォーマットに沿って適切に手続きを迅速に進めていただいたり、打ち合わせのあとは、翌日にすぐに簡潔で論点がまとまったWrap Upのメールが送られてきたり、いまでもフォローアップのメッセージが、きちんとWeChatで送られてきたり、と、ものすごくしっかりとしているんですよね。

印象としては、深センのスピード感を保ちながら、日本や台湾の企業にあるような法務やきちんと抑えるべきところをきっちりと仕事をされているという、日本と中国の両方の良さを兼ね備えた会社であるように感じました。

また上記で触れた、フランスのハードウェアスタートアップ製品の量産のための再設計の見積金額などはかなり安価だと感じる金額でした。

工場もとてもキレイで、最新の設備の機会をきちんとメンテナンスし、日本のような6S活動にも真面目に取り組んでいるように見えました。


(工場内で掲げらていた6S:整理、整頓、清掃、清潔、躾、安全の掲示。最後だけ英語でSafetyなんですねw)

おそらくこれからもやりとりさせていただいたり、お付き合いさせていただくことになる会社になるのではないかと思います。

最後に余談ですが、hackfonというindiegogoでクラウドファンディング中の製品ですが、まだ20日間ほどキャンペーン期間を残しており、500円から支援いただけるようにリワードを設定しています。

興味をお持ちいただいた方には、このような報告を今後の製造などの過程を共有させていただきながら、製品を作り上げていきたいと思いますので、ご支援お待ちしています。