Cerevoというハードウェアベンチャーに入社してからはこうした海外の展示会に、毎月のように出展したり参加したりしています。いつもは出展者という形での参加が多く、自社の展示ブースを切り盛りしたり来場者の対応をするのに手いっぱいでイベントを俯瞰的に見て回ることは難しいのですが、今回は展示会内で開催されたひとつのピッチコンテストへの参加のみでしたので、久しぶりに比較的余裕をもってイベント全体をみることができましたので、こうしてレポートを書いてみました。(本当はもう少し早めにレポートをあげたかったのですが、このイベント後に顧客先訪問のために訪れたアムステルダムのホテルでPCを忘れたことを再びパリに戻る電車の中で気づき、別のパリのイベントに出展後、日本に戻ってきてようやくPCを手にこうして記事を書いている次第です・・・)
Publicys社は世界の広告代理店売上ランキングで毎年大体3位に位置する大手代理店です。日本の電通が大体5位に例年位置しています。
(Publicys社の人が90周年ということで会場内のカンファレンススペースで話していました。エリック・シュミットといったビッグネームによるセッションもあったので、最初はそうしたセッションにも興味があって参加したのですが、実際に会場にきてみると後述の怒涛のスタートアップの出展のほうに興味をすっかり奪われてしまっていました)
当初はこちらのイベントへの出展も少し考えていたのですが、費用対効果が見合わないかなと考えたことや、運よくこの展示会の中で開催されるピッチコンテスト参加のセレクションに通ることができましたので、今回はピッチのみ参加してきました。
テレコミニュケーションと接続性というテーマでOrange社だけで、50社のスタートアップを支援しており、イベントステージを囲むように50社が各社幅約1メートルのスタンドスペースで展示をしていました。この展示スタンドは海外では香港RISEや、日本では今年2月にBRIDGEが行った「THE BRIDGE FES 2016」に近いものだったといえば、伝わりやすいかもしれません。
(Orange社のブースだけで50社のスタンド。)
こうしたブースがOrange以外に、各テーマごとに、そのテーマに関連した企業がスポンサーとなり、17個同じような広さで展示会場全体に広がっていました。フィンテック関連のスタートアップは、グローバルな金融グループであるBNPパリバが同じように50社を支援してスタンドを展開し、小売りに関連したスタートアップをカルフールが50社、オープントランスポテーションをテーマにフランス国鉄SNCFが50社を出展させており、ルイヴィトングループもこうしたスポンサー企業のひとつとして、ラグジュアリーというテーマに関連したスタートアップを支援し、出展させていました。
(この赤紫の箱、ひとつひとつに主要な17のテーマのひとつを軸にスポンサー企業とその周辺の50社のスタンドが出展しており、それ以外のスペースにも数多くのスタートアップが同様のスタンドとともに出展していました)
参加者によると、出展者以外に、登壇者やピッチ参加者などを含めて5000社のスタートアップがこのイベントに集まっていたそうです。
会場をしばらく回ってみて気がついたのですが、
・50社のスタンドそれぞれに平均1分ほどしかかけなくても1時間近くかかる(50社の中で良さそうなところに重点的に時間をかけてチェックしてみようとしても同じくらいかかる)
・こうしたスタンドが集まったブースが20近く会場を埋め尽くしているので、そのペースですべてを見ようとすると最低でも20時間かかる。会期が3日間あるとはいえ、会場内にはピッチコンテストや、デモンストレーションなども各ブースで開催されているため到底全部は見切れない、というか不可能
ということで、どうしてもそれぞれのスタンドに足を運ぼうとするよりは、大枠での全体の雰囲気を感じながら、会場を巡ってみるという回り方になってしまいました。
Bridge Fesや香港RISEくらいの100社から数百社くらいまでの規模なら、もう少しひとつひとつをじっくりと見てみようという考えもでてくるのですが、これだけ集まってしまうと、その中からチェリーピックしようという気もちょっと失せてしまいますね。
興味があるテーマに特化してみて回るということも当然できるのですが、他の参加者に感想をきいてみても同じような印象をもった人が多かったようです。各スタンドが共通ブースであるが故に、視覚的に統一感があるのも逆に一目でサービスの違いやスタートアップの違いを認識したり識別するのが難しいという弊害も出ているように感じました。
(ひたすら奥までスタンド、スタンドが続いてます)
(イベント全体として統一感はでるものの、来場者としては、サービスの特性や違いをひとめでみるのが難しかった共通スタンド。特に最終日はPublic Dayだったこともあり、資金調達といった出展者の目的にはあわなかったからかスタンドから人が離れていたり、スタンドにいるよりは営業にまわったり、あるいはそもそも足を運ぶ人が少なくて暇そうにしているスタンドも数多くありました)
そうした中、IoT系の展示スタンドは、ひとめで物理的なモノをビジュアルとして提示できることもあり、他よりも人を多く集めているケースが多かったように思います。手前味噌ですが、弊社を含めてハードウェア系のベンチャーはこうしたところがメリットのひとつではありますね。展示会にもっていく荷物がどうしても大がかりになってしまうので、展示準備も撤収も大変になってしまうので大変なのですが、視覚的に有利でアテンションを集めやすいというのはやはりありがたいことだな、と再認識しました。
(ハードウェア系のスタンド。初日、二日めは来場者が関係者か€390の有料チケットを購入した人に限られていたので、それほど来場者は多くありませんでした)
(最終日土曜日のPublic DayのIoT系スタートアップを中心としたスタンドスペース)
テーマごとにスポンサー企業が支援するという形は、これまでこうしたイベントをリードしてきたIT業界から、インターネットやスタートアップというものがある種、当たり前となり、各業界をリードする既存のプレイヤーがイニシアチブをとるようになってきたと感じさせられるものでした。
フランスでも数年前まではLe Webというイベントが、そうしたIT業界、スタートアップコミュニティから発したものとして有名で、過去に2回参加しましたときにはルノーなどの既存の大手企業はあくまでも会場の盛り上げ役として脇役的にスポンサーをしているという印象を受けました。
今回のイベントは、そうした従来のスタートアップ系イベントとはまったく異なるもので、見ていて世界的にもこのように潮目が変わっていくのでは?と感じさせられるものでした。
日本でいえば、トヨタ、JR、イオン、第一生命といった大企業中心にこうしたスタートアップをけん引していくところがトータルで15社以上集まっているのを想像していただければイメージしやすいかと思います。しかもこうした企業が10社、20社という単位ではなく各社50社という単位で支援しているのを考えればでその物量、影響力は凄まじいものになると想像できるのではないでしょうか。
フランスは世界最大の家電見本市、ラスベガスのCESにも今年初めハードウェアスタートアップを100社以上送り込んでおり、ある種、アメリカ以上に熱量が高いところがあります。
(フランス国鉄SNCFはトランスポテーション関連のスタートアップを。鉄道に限らず、ライドシェア関連のスタートアップも展示していました)
最近のスタートアップ系イベントでは参加していて、日本・海外を問わず、どうしても登壇する大御所がマンネリ化したり、固定化したりするという弊害が少なからずあるように感じることが多かったのですが、今回のViva Technologyでは、数が多すぎてどこにフォーカスしたらいいかがわからない反面、圧倒的な数を集めたことにより生じた熱量や、IT業界ではない業界が主導することで、これまでには体験できなかった新鮮さを感じることができたように思います。
グーグルやFacebookは他のイベントでもブースを出展していたりするということもあるでしょうし、1社のサービスをみるよりは、各テーマごとに50の異なるスタートアップのサービスをチェックするほうが、イノベーションの多様性ということでより来場者にとって興味深かったのではないでしょうか。
(facebookブース)
(googleブース)
FacebookやGoogleもいわばIT業界発の企業なわけで、このViva Technologyでは、そうではないプレイヤーがやはり存在感を放つようなものとなっていました。
こうしたピッチコンテストは私が参加したもの以外にも様々なテーマごとにイベント会期中だけでも20以上ありました。(このイベントに出展するためのコンテスト、というのも会期の事前にありました)
通常、スタートアップ系のイベントでは、イベント全体を通して単一のピッチコンテストが行われるといったものが主流で、数が多くてもテーマ別に5つくらいに絞られているものですが、同時並行で様々なテーマで20ものピッチコンテストが行われるというのはかなり珍しい部類に入るのではないかと思います。
ひとつひとつのピッチコンテストに対する集客やメディアの注目は分散されますが、多様な接点や機会が多くのスタートアップに生まれるという意味で面白いな、と参加しながら感じさせられました。
この手のスタートアップイベントには弊社もいくつか参加してきていますが、参加しているスタートアップの数が100以上と多くなってくると、どうしても出展することによりメディアに取り上げてもらえる機会は少なくってきます。展示しているだけではあまり意味がなく、むしろ講演やピッチに参加するほうがメディアに取り上げてもらえる機会が多かったりするといった場合も往々にしてあったりします。
またスタートアップ中心の展示会は、VCや投資家との接点を広げるには効率的ですが弊社のような資金調達のニーズは今はなく採用にもそれほど困っておらず、商品のバイヤーとなる人との接点を増やしたいと考えている会社にとっては魅力的ではなかったり、そのイベントとその会社があまりマッチングしていないというケースもあるのではないかと思います。
今回のイベントはスポンサーとなっているフランス企業や出展しているスタートアップの中にも顧客や面白い関係性が構築できるところがあるかもしれないと考えて出展も少し検討したのですが、結果的にはコストをかけず選考に通ることができたスポーツ関連のサービス・製品を提供するスタートアップをテーマにしたピッチコンテストにて、弊社のスポーツ関連IoT製品を中心にピッチを行ってきました。
二社めとしてピッチした後、審査員に呼んでいただき質問をいくつか受けたので(一社めのピッチの後では起きなかったことなので)結構、感触がよかったかなと思ったのですが、その後ピッチを行ったスタートアップも数社続けて弊社より長めに質問を受けていたため、二番手、三番手の結果に終わったかなと思いながら荷物をまとめていたのですが・・・
なんと、運よく優勝することができました。
正直、ピッチコンテストに参加したのは優勝自体があまり目的ではなく、こうした展示会で来場者向けに自分たちをPRする機会を極力コストをかけずに得られれば、と考えてのことだったのですが、フランス市場進出への製品の一定期間の無償マーケティングサポートをピッチコンテストに優勝した成果として得らることになり、弊社にとってとても有意義なものとなりそうです。
ちょうど自分がピッチしていたときにピッチ主催者が無料カクテルを振る舞っていたため、観客がこのコンテスト中に一番多く、そのカクテルがなくなってしまったあと、観客がどんどんと減っていっていたということがありましたので、主催者側が準備したお酒を出すタイミングに助けられたような気がしています。
(こうしたピッチコンテストは観客がさっぱりということもあるので、それを覚悟していったのですが、お酒につられて人が集まっているタイミングで発表できたことにより、結構多くの人にみていただくことができました)
今回はPubicys 90周年ということもあって開催されたイベントだった?のかもしれませんが、今までの有名なスタートアップ系イベントとはかなり雰囲気が異なっており、多くのスタートアップにとっていろいろな意義が得られたイベントだったのではないかと思います。
問題点もいくつかみられましたが、もし来年開催されるとしたら、より洗練されて魅力的なイベントとなると思いますので、海外進出を考えているところにとっては注目しておいて損はないイベントだと思います。
アメリカで、グーグル、Facebook、マイクロソフト、Amazon、セールスフォースといった会社の存在感がなく、その他の大手企業がスタートアップを大きく盛り上げているイベントというのは想像しにくいと思いますが、それをまさに体現してみたという面白みがこのイベントにはあり、特にフランスを代表するブランド、ルイ・ヴィトングループがこうしたイベントで存在感を出していたのがとても印象に残りました。
世界的大手広告代理店が仕掛けたスタートアップ向けイベント
このViva Technologyというイベントは、世界的な大手広告代理店、Publicys社がかかわっているイベントであるだけでなく、フランスの大手キャリアOrangeや欧州最大の小売り業者カルフールが関わっているということで注目していました。Publicys社は世界の広告代理店売上ランキングで毎年大体3位に位置する大手代理店です。日本の電通が大体5位に例年位置しています。
当初はこちらのイベントへの出展も少し考えていたのですが、費用対効果が見合わないかなと考えたことや、運よくこの展示会の中で開催されるピッチコンテスト参加のセレクションに通ることができましたので、今回はピッチのみ参加してきました。
数千社が集まったものすごい熱気
ちょっと豪華なスタートアップ向けイベントかな、ということで足を運んでみたイベントでしたが、実際に会場に入ってみると度肝を抜かれました。何しろ出展しているスタートアップの数が桁違いなのです。テレコミニュケーションと接続性というテーマでOrange社だけで、50社のスタートアップを支援しており、イベントステージを囲むように50社が各社幅約1メートルのスタンドスペースで展示をしていました。この展示スタンドは海外では香港RISEや、日本では今年2月にBRIDGEが行った「THE BRIDGE FES 2016」に近いものだったといえば、伝わりやすいかもしれません。
(スタンドは各社共通のサイズとデザイン)
こうしたブースがOrange以外に、各テーマごとに、そのテーマに関連した企業がスポンサーとなり、17個同じような広さで展示会場全体に広がっていました。フィンテック関連のスタートアップは、グローバルな金融グループであるBNPパリバが同じように50社を支援してスタンドを展開し、小売りに関連したスタートアップをカルフールが50社、オープントランスポテーションをテーマにフランス国鉄SNCFが50社を出展させており、ルイヴィトングループもこうしたスポンサー企業のひとつとして、ラグジュアリーというテーマに関連したスタートアップを支援し、出展させていました。
(ラグジュアリーをテーマにしたスタートアップが集まったルイ・ヴィトンブース)
こうした自動車、小売り、保険、ラグジュアリー、フィンテック、スポーツなど様々なテーマを軸にした17のスポンサーブース以外に、イスラエルや、ベルリン関連のスタンドなどが集まった地域別のブース、La French Techというスタートアップコミュニティを軸にしたブースなどがあり、20を超えるテーマごとにそれぞれ平均して50社ほどが展示をしており、単純計算で1000社が出展していて、ものすごい熱気を放っていました。前述のBridge Fesで100社、香港RISEでも数百社くらいだった(日ごとの入れ替え制だったのでトータルではその倍ということになるのかな)と思いますので、桁違いに多くのスタートアップが出展しているイベントでした。
また単にスタートアップが並列的に集まっているのではなく、スポンサー企業を中心に、ピッチコンテストが展開されていたり、スポンサー企業によるパネルディスカッションやデモンストレーションを交えながら、その周辺にスタートアップのブースが配置されているというのも今まで筆者が参加したイベントではちょっと見たことがない形式でした。
参加者によると、出展者以外に、登壇者やピッチ参加者などを含めて5000社のスタートアップがこのイベントに集まっていたそうです。
だがしかし多すぎる
これだけ多く集まったスタートアップの熱量にただひたすら圧倒されていましたが、厄介なことにこれだけ多く集まるととてもすべては見て回れないのですよね。会場をしばらく回ってみて気がついたのですが、
・50社のスタンドそれぞれに平均1分ほどしかかけなくても1時間近くかかる(50社の中で良さそうなところに重点的に時間をかけてチェックしてみようとしても同じくらいかかる)
・こうしたスタンドが集まったブースが20近く会場を埋め尽くしているので、そのペースですべてを見ようとすると最低でも20時間かかる。会期が3日間あるとはいえ、会場内にはピッチコンテストや、デモンストレーションなども各ブースで開催されているため到底全部は見切れない、というか不可能
ということで、どうしてもそれぞれのスタンドに足を運ぼうとするよりは、大枠での全体の雰囲気を感じながら、会場を巡ってみるという回り方になってしまいました。
Bridge Fesや香港RISEくらいの100社から数百社くらいまでの規模なら、もう少しひとつひとつをじっくりと見てみようという考えもでてくるのですが、これだけ集まってしまうと、その中からチェリーピックしようという気もちょっと失せてしまいますね。
興味があるテーマに特化してみて回るということも当然できるのですが、他の参加者に感想をきいてみても同じような印象をもった人が多かったようです。各スタンドが共通ブースであるが故に、視覚的に統一感があるのも逆に一目でサービスの違いやスタートアップの違いを認識したり識別するのが難しいという弊害も出ているように感じました。
(ひたすら奥までスタンド、スタンドが続いてます)
(イベント全体として統一感はでるものの、来場者としては、サービスの特性や違いをひとめでみるのが難しかった共通スタンド。特に最終日はPublic Dayだったこともあり、資金調達といった出展者の目的にはあわなかったからかスタンドから人が離れていたり、スタンドにいるよりは営業にまわったり、あるいはそもそも足を運ぶ人が少なくて暇そうにしているスタンドも数多くありました)
そうした中、IoT系の展示スタンドは、ひとめで物理的なモノをビジュアルとして提示できることもあり、他よりも人を多く集めているケースが多かったように思います。手前味噌ですが、弊社を含めてハードウェア系のベンチャーはこうしたところがメリットのひとつではありますね。展示会にもっていく荷物がどうしても大がかりになってしまうので、展示準備も撤収も大変になってしまうので大変なのですが、視覚的に有利でアテンションを集めやすいというのはやはりありがたいことだな、と再認識しました。
(ハードウェア系のスタンド。初日、二日めは来場者が関係者か€390の有料チケットを購入した人に限られていたので、それほど来場者は多くありませんでした)
スタートアップ向けイベントはもうIT業界のためのものじゃない
もし自社が出展していたら、と考えるとこの出展者数のあまりの多さは逆に個々のスタンドの集客にとってはマイナスではないかとも感じましたが、これだけの熱量は、この数のスタートアップと、それを支援するスポンサー企業が集まならければ生じなかったように思います。テーマごとにスポンサー企業が支援するという形は、これまでこうしたイベントをリードしてきたIT業界から、インターネットやスタートアップというものがある種、当たり前となり、各業界をリードする既存のプレイヤーがイニシアチブをとるようになってきたと感じさせられるものでした。
フランスでも数年前まではLe Webというイベントが、そうしたIT業界、スタートアップコミュニティから発したものとして有名で、過去に2回参加しましたときにはルノーなどの既存の大手企業はあくまでも会場の盛り上げ役として脇役的にスポンサーをしているという印象を受けました。
今回のイベントは、そうした従来のスタートアップ系イベントとはまったく異なるもので、見ていて世界的にもこのように潮目が変わっていくのでは?と感じさせられるものでした。
日本でいえば、トヨタ、JR、イオン、第一生命といった大企業中心にこうしたスタートアップをけん引していくところがトータルで15社以上集まっているのを想像していただければイメージしやすいかと思います。しかもこうした企業が10社、20社という単位ではなく各社50社という単位で支援しているのを考えればでその物量、影響力は凄まじいものになると想像できるのではないでしょうか。
フランスは世界最大の家電見本市、ラスベガスのCESにも今年初めハードウェアスタートアップを100社以上送り込んでおり、ある種、アメリカ以上に熱量が高いところがあります。
(フランスのテレビ局TF1は主にメディア関連のスタートアップを支援)
(ホテルグループAccor Hotelsはツーリズムやおもてなしに関係したスタートアップを支援)
最近のスタートアップ系イベントでは参加していて、日本・海外を問わず、どうしても登壇する大御所がマンネリ化したり、固定化したりするという弊害が少なからずあるように感じることが多かったのですが、今回のViva Technologyでは、数が多すぎてどこにフォーカスしたらいいかがわからない反面、圧倒的な数を集めたことにより生じた熱量や、IT業界ではない業界が主導することで、これまでには体験できなかった新鮮さを感じることができたように思います。
グーグルやFacebookですら注目が得られない世界
このViva Technologyには、FacebookやGoogleも出展していましたが、会場の中では地味な存在であるように感じられ、それほど集客もないように見受けられました。グーグルやFacebookは他のイベントでもブースを出展していたりするということもあるでしょうし、1社のサービスをみるよりは、各テーマごとに50の異なるスタートアップのサービスをチェックするほうが、イノベーションの多様性ということでより来場者にとって興味深かったのではないでしょうか。
(facebookブース)
(googleブース)
FacebookやGoogleもいわばIT業界発の企業なわけで、このViva Technologyでは、そうではないプレイヤーがやはり存在感を放つようなものとなっていました。
ピッチコンテストに参加して
今回、このViva Technologyでは展示会の中で、数々のコンテストが会期前や会期中に開催されており、会期前に選考がったひとつのピッチコンテストに応募してみたところ、運よく選考が通ったので参加してきました。こうしたピッチコンテストは私が参加したもの以外にも様々なテーマごとにイベント会期中だけでも20以上ありました。(このイベントに出展するためのコンテスト、というのも会期の事前にありました)
通常、スタートアップ系のイベントでは、イベント全体を通して単一のピッチコンテストが行われるといったものが主流で、数が多くてもテーマ別に5つくらいに絞られているものですが、同時並行で様々なテーマで20ものピッチコンテストが行われるというのはかなり珍しい部類に入るのではないかと思います。
ひとつひとつのピッチコンテストに対する集客やメディアの注目は分散されますが、多様な接点や機会が多くのスタートアップに生まれるという意味で面白いな、と参加しながら感じさせられました。
この手のスタートアップイベントには弊社もいくつか参加してきていますが、参加しているスタートアップの数が100以上と多くなってくると、どうしても出展することによりメディアに取り上げてもらえる機会は少なくってきます。展示しているだけではあまり意味がなく、むしろ講演やピッチに参加するほうがメディアに取り上げてもらえる機会が多かったりするといった場合も往々にしてあったりします。
またスタートアップ中心の展示会は、VCや投資家との接点を広げるには効率的ですが弊社のような資金調達のニーズは今はなく採用にもそれほど困っておらず、商品のバイヤーとなる人との接点を増やしたいと考えている会社にとっては魅力的ではなかったり、そのイベントとその会社があまりマッチングしていないというケースもあるのではないかと思います。
今回のイベントはスポンサーとなっているフランス企業や出展しているスタートアップの中にも顧客や面白い関係性が構築できるところがあるかもしれないと考えて出展も少し検討したのですが、結果的にはコストをかけず選考に通ることができたスポーツ関連のサービス・製品を提供するスタートアップをテーマにしたピッチコンテストにて、弊社のスポーツ関連IoT製品を中心にピッチを行ってきました。
二社めとしてピッチした後、審査員に呼んでいただき質問をいくつか受けたので(一社めのピッチの後では起きなかったことなので)結構、感触がよかったかなと思ったのですが、その後ピッチを行ったスタートアップも数社続けて弊社より長めに質問を受けていたため、二番手、三番手の結果に終わったかなと思いながら荷物をまとめていたのですが・・・
なんと、運よく優勝することができました。
正直、ピッチコンテストに参加したのは優勝自体があまり目的ではなく、こうした展示会で来場者向けに自分たちをPRする機会を極力コストをかけずに得られれば、と考えてのことだったのですが、フランス市場進出への製品の一定期間の無償マーケティングサポートをピッチコンテストに優勝した成果として得らることになり、弊社にとってとても有意義なものとなりそうです。
ちょうど自分がピッチしていたときにピッチ主催者が無料カクテルを振る舞っていたため、観客がこのコンテスト中に一番多く、そのカクテルがなくなってしまったあと、観客がどんどんと減っていっていたということがありましたので、主催者側が準備したお酒を出すタイミングに助けられたような気がしています。
(こうしたピッチコンテストは観客がさっぱりということもあるので、それを覚悟していったのですが、お酒につられて人が集まっているタイミングで発表できたことにより、結構多くの人にみていただくことができました)
今回はPubicys 90周年ということもあって開催されたイベントだった?のかもしれませんが、今までの有名なスタートアップ系イベントとはかなり雰囲気が異なっており、多くのスタートアップにとっていろいろな意義が得られたイベントだったのではないかと思います。
問題点もいくつかみられましたが、もし来年開催されるとしたら、より洗練されて魅力的なイベントとなると思いますので、海外進出を考えているところにとっては注目しておいて損はないイベントだと思います。
これからのスタートアップエコシステムは変わっていく?
ということで、まとめとしてはつたないのですが、スタートアップイベントとして世間の方向性が、IT業界から軸を大きく移してきて、異なったエコシステムを今後は生じていくことになるのではないかということを肌感覚で得ることができるイベントでした。フランスはアメリカとも違った意味で面白いですね。アメリカで、グーグル、Facebook、マイクロソフト、Amazon、セールスフォースといった会社の存在感がなく、その他の大手企業がスタートアップを大きく盛り上げているイベントというのは想像しにくいと思いますが、それをまさに体現してみたという面白みがこのイベントにはあり、特にフランスを代表するブランド、ルイ・ヴィトングループがこうしたイベントで存在感を出していたのがとても印象に残りました。
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